冷蔵庫にはサラダ。コンビニで野菜ジュース。気が向いた日はオートミール。「ちゃんと食物繊維、摂ってるはず」――なのに、便通もお腹の張り感も、思ったより変わらない。
そんな経験、ありませんか?
「食物繊維=腸にいい」というイメージはすっかり定着していますが、実は食物繊維には2つの顔があって、その使い分けで腸への手応えが変わると言われています。今日は、その「2つの顔」の話を、ナオとみさきと一緒にやさしく整理していきます。

今日お話しする2人
ナオ(32歳):腸活コミュニティの整理役。先生ではなく、一緒に並んで考えてくれる人。
みさき(29歳):会社員。最近、サラダ生活を続けているのに、お腹が張る感じが気になっている。
「実はそれ、食物繊維の"使い分け"かも」
「食物繊維を摂っているのに、お腹の感じが変わらない」――この感覚は、決して気のせいでも、努力不足でもありません。近年の腸内環境研究では、食物繊維の"種類"によって腸での働きが大きく異なることが繰り返し報告されています。
レタス、キャベツ、ブロッコリー、ごぼう、玄米、海藻――どれも「食物繊維」というラベルでひと括りにされがちですが、それぞれが腸内で果たしている役割は、まったく別物です。「食物繊維をたくさん摂る」だけでは見落とされがちなのが、この"使い分け"の視点なんです。
最小限の知識:食物繊維の「2つの顔」
① 食物繊維には、まったく違う2つのタイプがある

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維。同じ「食物繊維」というカテゴリーに括られながら、腸の中での働きは、ほぼ別物と言ってもいいくらい違いがあると考えられています。
理想的なバランスは「水溶性1:不溶性2」が目安と言われています。ところが、現代の食生活――とくに「健康のために野菜を意識しよう」とサラダ中心になりがちな人は、知らないうちに不溶性に大きく偏っているケースが少なくありません。
このバランスが崩れると、腸内環境への手応えも変わってくる可能性が指摘されています。
② 水溶性食物繊維=腸内細菌の「ごはん」
水溶性食物繊維は、水に触れるとゼリー状にとろっと溶けるのが特徴です。胃や腸の中をゆっくり進み、食後の血糖値の急な上昇をやわらげる働きにも関連が示唆されています。
そして何より大きな役割が、腸内細菌のエサとして働くこと。善玉菌が水溶性食物繊維を発酵させて作り出す「短鎖脂肪酸」は、腸内環境の維持や免疫機能との関連が、多くの研究で報告されています。
意外と知られていないのが、レタスやキャベツ、ブロッコリーといった「サラダの定番」には、水溶性食物繊維はそれほど多く含まれていないという点です。「野菜=水溶性も摂れている」と思い込みやすいですが、実際の中身は不溶性に大きく偏っていることが多いと言われています。
③ 不溶性食物繊維=腸の「お掃除屋さん」
不溶性食物繊維の代表は、玄米、ライ麦、きのこ類、根菜類(ごぼう、れんこん、切り干し大根)、豆類、そしてレタスやキャベツといった葉物野菜です。
不溶性食物繊維自体は「悪者」ではまったくなく、むしろ便のボリュームを作るために欠かせない存在です。ただし、水分が少ない状態で不溶性ばかりが大量に入ってくると、腸内で固まりやすくなり、本来のスムーズな動きを邪魔してしまう可能性があると言われています。
過敏性腸症候群(IBS)や慢性的な便秘の方では、不溶性食物繊維(特に小麦ブランなど)の摂取で腹痛や膨満感が強くなる一方、水溶性食物繊維(オーツ麦など)に切り替えると症状が穏やかになるケースが、海外の臨床ガイドラインでも示唆されています。
今日からできる、食物繊維の使い分け3ステップ
① お腹が張る・コロコロ便のときは「水溶性をプラス」

「お腹が張る」「コロコロ便」――この2つは、水溶性食物繊維が足りていないサインの可能性があると言われています。
簡単に水溶性を足す方法としておすすめなのが、毎日の食卓に「海藻ひとつまみ」「ネバネバ系一品」「オートミール置き換え」のどれか1つを加えること。
【水溶性食物繊維が多い食材】
・海藻類:ワカメ、めかぶ、もずく、昆布、海苔
・ネバネバ系:長芋、オクラ、なめこ、モロヘイヤ
・穀類:大麦(押し麦)、オーツ麦
・果物:りんご、キウイ、いちじく、プルーン
毎日3食すべてに気を配る必要はありません。「朝のヨーグルトにオートミールを足す」「お味噌汁にめかぶを入れる」――この程度の小さな足し算から始めても、変化は十分起こり得ると考えられています。
② 食事量・便量が少ない人は「不溶性をプラス」

食事量が少ない人、ダイエット中の人、もともと小食な人――こうした方の便通の悩みは、実は「食物繊維の偏り」ではなく、便を作るための材料自体が不足している可能性があると言われています。
【不溶性食物繊維が多い食材】
・穀類:玄米、ライ麦、全粒粉パン
・きのこ類:しめじ、えのき、まいたけ、椎茸
・根菜類:ごぼう、れんこん、人参、切り干し大根
・豆類:大豆、ひよこ豆、レンズ豆
・葉物野菜:ほうれん草、小松菜
ポイントは、水分をしっかり摂りながら、よく噛んで食べること。不溶性食物繊維は水を吸って膨らむ性質があるため、水分が足りていないと、かえって便を硬くしてしまう可能性があるんです。
③ 「水溶性1:不溶性2」を、ゆるく意識する
「水溶性1:不溶性2」――この比率を、厳密に毎日計算する必要はまったくありません。ただ、意識として持っておくと、「あ、今日は不溶性ばっかりだったな」「水溶性を少し足そうかな」と、自然と食卓のバランスが整っていきます。
特別なサプリを買い足さなくても、毎日の食卓で十分カバーできる範囲です。「全部を変える」より、「1品だけ足す」のほうが続きやすいと考えられています。
でもね、ここまでの話は「平均的な話」

「水溶性1:不溶性2」「腸内細菌のエサ」「便のお掃除役」――こうした一般論はとても役立ちますが、最終的にあなたの腸がどんな食物繊維を「欲しがっているか」は、あなたの腸内細菌の構成によって変わると言われています。
水溶性食物繊維を分解するのが得意な菌、不溶性をしっかり活用できる菌、特定の海藻を分解する珍しい菌(実際、海藻分解菌は日本人に多いという報告もあります)――こうした個性が、人によってまったく違うんです。
「みんなにいい食べ物」より、「自分に合う食べ方」を見つけるほうが、結果として遠回りに見えて一番の近道になる可能性があります。
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まとめ
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2つの種類があり、腸での役割が違うと言われています。水溶性は「菌のごはん」、不溶性は「便のお掃除屋さん」のような働き。サラダばかり食べる人は、不溶性に偏っている可能性があります。
お腹が張る人は水溶性をプラス、便量が少ない人は不溶性をプラス。理想のバランスは「水溶性1:不溶性2」が目安ですが、ただし、合う食物繊維は人それぞれ。まず自分を知るところから、はじめてみませんか。
参考文献
The Impact of Dietary Fiber on Gut Microbiota in Host Health and Disease (Cell Host & Microbe, 2018)